遺体を発見・突然のお別れ

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発見

先日、いつも通り仕事をしていたら、父の家に週1度入るヘルパーさんから電話がきた。珍しく鍵が開いてなく、電話をしても出ない。でも車はある。と

面倒なほど几帳面な父なので、人が来る日に玄関が開いていないのはおかしい。嫌な予感、職場の誰かに言いたくて、言える職員を探したが、そういう時に限っていない。結局そのまま職場を飛び出した。

職場から、実家まで車で40分ほど。こういう時は、アクセルを全開に踏み込みそうなので、何度もスピードメーターを見た。途中パトカーともすれ違う。気をつけよう!

でも実家に到着したらなぜか20分でついた。変だな、まぁいいや。高校生以来使うことのなかった実家の鍵を取り出し、開けて中に入った。

呼ぶことすらせず、どこにいるか私の目線はもう下だった。

そして寝室のベッドではなく床で、すっかり変わり果てた姿になっていた。見たところ数日は経過していて、足にも紫斑が、、、

私は介護福祉士もあり、以前は訪問介護で働いていた経験から、独居者の遺体の発見から、その後の流れはわかっていた。でも身内なのに、自分でもびっくりするほどの冷静さだった。その時は、、、

救急要請

それでもすぐに警察を呼ぶか、救急車を呼ぶか迷ったが、何となく近所のことも考えて、先に救急に電話をした。

救急車が来るまでの間、父に触れたかったけど、現場は保存しないといけないので、何も触れずに、スマホに電話を受けた時間、職場を出た時間、到着から入室、発見の時間、救急要請の時間を記録した。

入室から救急要請まで5分かかっていた。発見した瞬間、自分の世界が変わった気すらした。

救急車がこちらに向かっている間、父の穏やかな顔を見ながら、いつも父にお酒を持って遊びに来てくれる一番のお友達に電話をして、私の職場にも明日から休むことを伝えた。父の兄弟にも連絡。必要な人には漏れなく連絡。

救急車は音は聞こえているのに、全然近づいて来ない。迷ったらしく変な方向からきた。とはいえ急ぐ必要もないので気にもならない。

救急隊の方は、とても気をつかっていただき、振れるはずもないのに血圧や体温などのバイタルを測ってくれて、除細動器まで出してくれ、冷たく動かない父の心臓に貼ってくれた。

もちろん作動はしないし反応はない。

一通りのことを行ったあと、「誰もいない状態で亡くなられていたので、警察に連絡させて頂きます。」と穏やかに言ってくれた。

警察

間もなく警察車両が4台来た。そこからは現場検証があるので、父がいる部屋から出ないといけなく、そのまま警察に連れていき、遺体の司法解剖に入ることになる。(※後に司法解剖にはならなかった)

予想では4~5日は経ってるだろうから、最後かもしれないし、もう一度会いたいと思いながらも、見ることはできない。

警察からは事情聴取を、家の別室で受けた。記録をしていたので、スラスラと答えられたのと、警察の方はとても気をつかって優しくあたたかい対応をしてくれた。脱ぎ捨てていた父の衣服や下着も拾ってくれたりもした。そこでやっと少し涙が出てきた。

警察車両が遺体も連れて、いなくなったあと、さて何が起きたのか?という気持ちになり、冷蔵庫の中や周りを見渡す。

謎解き

冷蔵庫には4日前製造で、その日が消費期限の春巻きが入っていた。どうやら買い物に行ったらしい。しかもいつもはあまり行かないスーパーだったので、謎だった。

電気がひとつもついていないから、多分昼間だったのだろう。それなのに、いつも付いているテレビが消えていた。ストーブは灯油が無くなってエラーが出た状態で電源がついたまま。

もし火が付いたままだったら、大変な姿を見つけることになっていただろう。寒いとはいえ、ギリギリだった。

テーブルの上にレトルトカレーの空き袋が残っていた。皿とスプーンは綺麗に洗ってあった。お昼にカレーライスを食べたようだ。六枚切りの角パンが2枚残っていた。角パンを買ったレシートが残っていた。そこに日付があった。

父は毎朝角パンと珈琲の人。

毎週金曜日に温泉に行っていたようだ。なぜかというと温泉の回数券11枚綴りが残っていて、購入日が書いていた。購入日は金曜日。1冊が全て使いきって、2枚だけ使っていたもう1冊が残っていた。

なるほど。。父が行くはずだった最後の金曜日はどしゃ降りの雨だった。だから、この週だけは土曜日に行ったんだ。土曜日は晴天だった。

午前中に温泉に行き、そこの近くのスーパーで春巻きなどを買い、帰ってきてすぐお昼にレトルトのカレーライスを食べていたから、いつもは常についているテレビが消えていたのだろう。

そんなことを考えながらいると、家の中を温泉から帰ってきて歩いている父が想像で見えてくる。買ったものを冷蔵庫に入れ、ご飯とカレーをレンジで温めて、食べた皿とスプーンは洗っている。お風呂で使った体を洗うタオルを干していた。

もちろんタオルはもう乾いているし、いつも使うまで干しっぱなし。

死後4日というところだろうと思った。

落ち着きタイム

とりあえず今は何もできないので、喫茶店にでも珈琲を飲みに行こう。私も呑気というか、落ち着きたかったのかもしれない。とりあえず雰囲気の良いところで座りたかった。

ゆっくり珈琲やパンケーキを食べていたら、警察から司法解剖が終わり、「事件性が無いので明日引き渡せます」とのことだった。

死因

事件性が無いから胃の内容物などは調べることなく、脳内の出血だけを調べてくれたが、脳はとても綺麗だったとのこと。

転んだ訳ではなく、具合が急に悪くなり、自分で床に横になったようだ。発見時、携帯は近くのテーブルの上だったが、なぜかメガネケースとハサミが遺体の近くにあった。携帯を取ろうとして違うの取っちゃったかな。

ベッドまで辿りつけず、ベッドまで2mも無い床の上で自ら横になり、そのまま心臓が止まったような、穏やかな顔だった。胃の検査をしていないので、はっきりと死亡日はわからなかった。だいたい4~5日とのこと。役所に出す死亡届や年金などの手続きもいちいち推定と書く。

警察への遺体引き取りは葬儀社じゃないとできない事になっているので、慌ててそこで葬儀社をスマホで探す。なんて便利な。

火葬

しかし、火葬場は混んでいて予約が3日後だった。娘と息子とは最後のお別れが間に合わないと思っていたが、全然間に合うことに。おじいちゃんっ子の子どもたちと、孫想いの父がお別れできることになった。でも時間が経ちすぎていることが心配で、次の日も1日警察に居させて貰うことにした。

翌々日、朝一番で警察に引き取りに行き、その日1日は一緒にいることにした。孫たちも帰ってくる。

思った以上に遺体の損傷がなく、なんだか前よりツヤツヤした綺麗な顔をして血色もよかった。

ずっとひとりで寂しがっていたが、こんなに賑やかな夜はなかったね。

そしてお別れの日、みなさんに協力して貰ったり、ご教授頂きながら、何とか無事に見送った。

グリ-フケア

私が最後に父と話したのは、食べ物を届けた後、家についた頃に電話が来て、「誕生日のお祝いを渡すのを忘れた~!」という電話だった。誕生日はまだだったし、「また行くからいいよ」と言ったのが最後だった。

そういえば、孫たちにも今年はなぜか夏にプレゼントあげてたね。フラグ立ってたのかな。

たぶん亡くなったのは誕生日前、発見したのは私の誕生日後。こりゃあ、誕生日ごとに寂しいから思い出せ!ってことね。

父が亡くなる前月までは、週に2回様子を見に行っていたのに、この時だけ10日間も空けてしまいました。

喪失感、罪悪感などなど、葬儀後すぐ様々な感情が沸き起こりました。

その時に役に立ったのが、グリーフケアの講義で学んだこと。自分の気持ちを言葉して誰かに話して聴いて貰うこと、気持ちを押し込めないこと、自分の状態を知ること、これが、哀しみを抱えながらも前に進むことができる秘訣です。

大切な人とのお別れは、誰もが避けて通ることができません。

そんな時、気が乗らないときは無理はしないで、でもひとりで頑張らずに誰かに話してみてください。

終わりに

父は74歳でした。これを見ることは無いとは思いますが救急隊の方、警察の方、ヘルパーさん、その他にも関係してくださった方々には本当に感謝です。そして最後までお読みくださりありがとうございました。

自分にとって大切な人を亡くした時にするとよい3つのこと
人は、大切な人を亡くすことを避けることはできません。そしてその気持ちの準備もできません。どんなに覚悟をしてもその喪失体験は起こってしまうのです。そうした中でも、哀しみを抱えながら、一歩前に進めるための方法をお届けいたします。
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